歴史好きな舞台女優による「古今東西、美しいもの」の鑑賞録です。 最新流行を追わなくても、「いいものは、いい」。 それを、きちんと形に残していければいいな。 ※ネタバレ注意※
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ピープルシアター『ちゃんぽん』
2009-06-21 Sun 17:25
 ユン・ジョンファン作、森井睦演出。第1回日韓演劇フェスティバル参加作品。
 5・18光州民主化運動はちゃんぽんの奪い合いから始まった…市民の目線から描くブラックコメディ。

 満足度の高いお芝居です。
 ハコの面では文句ありません。席良し、立地良し、空調良し。舞台装置、音響、照明も劇場に見合うレベル。着席した段階から、チケット代に見合ったものを十分提供された気分です。
 「安くない芝居」を提供する能力。芝居を見慣れない客層を取り込みたい劇団なら、特に注意したいところです。劇場で保証するか、芝居のソフトで保証するか…それ以外の面か。
 
 「それ以外の面」で残念だったのが、パンフレットがなかったところ。これには驚きました。
 モチーフ「光州事件」とは何か、は当然パンフレットで説明されるべき。できれば、当時の政府や軍の仕組みなどの時代背景もほしい。せめて、役者紹介で「空挺部隊●●役 ○○○○」とあれば、内容の理解に役立ったのに。
 単語は難解だし(役者の滑舌の問題もあり)、BGMのJ-POPに騙され、日本が舞台なのかと長らく勘違いしましたし、人間関係も最後まで悩んだし(オッパ、オンニを「兄さん」「姉さん」と訳せば、日本人の八割方が肉親だと誤解します。)、客目線で「韓国の脚本を日本で演じる」という視点を持ってほしかった気がします。
 つまり、背景を正しく伝えることよりも、感情に訴える方を劇団が安易に選んじゃったということなんでしょうね。それでは、ブラックコメディになり得ないのでは?と疑問がわきました。

 それでも、感情に訴える点では大変成功していました。
 特に、市民が攻撃を受けるシーン。数十人の役者が銃撃を受けると同時に大舞台をすべて壊していくのですが、無駄なく美しくじっくりと壊していく様は、演出の妙でした。そして、生演奏の胡笛の音色が物悲しく、観客の視線を終章の主人公の独白まで引っ張っていきます。
 後半数章の凄烈な美しさに、一気に満足感が高まった芝居でした。
 

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手塚治虫展〜未来へのメッセージ
2009-06-19 Fri 18:45
 マンガ好きが観に行く展覧会かと思うでしょう?
 ここで見られるのは、昭和から現代につながる日本史です。そして、いつの間にか失われた地球の美しさ、人間の尊厳を取り戻したいと願う、未来に向けた地球史でもあります。
 
 手塚治虫の作品はたくさん読んでいるつもりでしたが、この展覧会に行くと、全然読んでいないんだなあと実感させられます。(会場内でも同様の溜息が聞こえました。)
 特に、現在「全書」などで手に入りやすい作品は、虫プロダクションが倒産してからの作品なのですね。手塚治虫の円熟期にもあたり、人生の後半戦です。

 昭和史を覗くとすれば、前半戦のほうが興味深いです。小学生の頃からの天才ぶり、戦争中に描いていたマンガ、学生演劇をかじって生まれたスターシステム、トキワ荘、『ジャングル大帝』を始めとした日本アニメが開拓されていく様…。
 数々の伝記や自序マンガで有名なエピソードばかり。その作品のナマ原稿を間近で見られるのは、まさに感激です。
 それ以上に、これほどの膨大な資料がいまだに残っているとは…。ご本人が、こんなに大事に保管していたのでしょうか。異常に几帳面な性格が作品の端々からも窺えます。
 
 後半戦は、大きくは「医療マンガ」「火の鳥」「手塚治虫に影響を受けた人々」のブースに分かれます。展覧会のレベルを超えた嗜好をこらしてあって、どれも見ごたえがあり、離れがたくなります。
 「手塚治虫は臨床医ではないから、手術シーンなんてデタラメだ。」と揶揄する人もいます。が、そんな人こそ、医療マンガブースを観に来てほしい。技術的な描写が目につく手塚漫画だけれど、そこを揶揄して本質を理解しないのは、枝を見て根を見ないのと同じことだと気づくに違いありません。
 また、火の鳥ブースは、音と光と映像に身をゆだねてみましょう。私は『火の鳥』は難解で苦手だったのですが(おそらく、絵もセリフもひとつひとつに無駄がなさすぎるのです。)、ここでやっと、火の鳥の伝えたい言葉、地球へのメッセージが少し理解できた気がしました。


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スラムドッグ$ミリオネア
2009-06-12 Fri 23:51
 2008年イギリス。スラム街で育った少年ジャマールは、クイズ番組で最高賞金を獲得する。底辺の生き方をしてきた彼が、なぜクイズの答えを正解できたのか?
 警察で拷問を受けながら、彼が半生を語り出す。
 
 アカデミー賞8冠が納得できる、非常に良い作品。
 宗教紛争、孤児問題、児童虐待、裏社会、拡大する貧富の差・・・次から次に、目を覆いたくなるようなインドの暗部が映し出されます。が、ポップな演出・魅力的なBGMで緩急をつけ、重苦しいのに楽しく見られる、超良質のエンターテインメントです。
 クイズ番組・警察・回顧シーンなど、場所、時間軸、登場人物が高速で入れ替わり、頭がこんがらがってしまいそうなところを、恋愛を主軸に一本の筋の通った展開が、観客の視点をまったくぶれさせないところも見事です。
 重いのに、なんだかとってもオシャレな映画なのです。
 
 役者がみんなキラキラしているのも良いですね。
 どうみても正直者の主人公、超美少女のヒロイン、個性的な兄。
 1つの役に対して、子役から3人の役者が演じるのですが、そのどれもが魅力的で、役のイメージをリレーしていくのです。
 特に、最も小さな時の子役たちは、ひときわ瞳がキラキラしています。母の惨殺も、虐待される孤児たちも、暗いエピソードをどんどん飲み込んで純化していく彼らの無邪気なパワーに圧倒されます。
 先進国に純粋な子どもはいなくなったという話を聞きますが、彼らを見ていると、それも真実のような気がします。(インドももはや発展途上国ではないけど。)
 
 一番ツボにはまったのが、エンディングテーマ。
 イギリス映画なのですがインド映画のダンスシーンを模して、主人公たちを囲んだ無数のダンサーが満面の笑顔で踊り狂います。
 1分前まで、お兄ちゃんの死に涙に暮れていたのに…みんな楽しそうだなァ、おい。
 吃驚しますが、これも、無数の哀しみを飲み込んだ生きる強さを表現しているように思えます。


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劇団サードクォーター『ケンジ』
2009-06-08 Mon 20:58
 学生闘争さかんな70年代に、偽学生として大学演劇部にもぐりこんだケンジ。
 性、飲酒喫煙、宮沢賢治、あらゆるものに触れながら、少年は心の解放にめざめていく。

 すぐれた演技も見られるし、エピソードのひとつひとつもつくりこんであるのに、調和がとれなくて、総合的に何が言いたいのかよくわかりませんでした。
 具はそれぞれ美味しいのに、餡かけがまずくていまひとつな酢豚を食べた感じ。
 演出や脚本でもう一歩踏み込めば、すごく感動できる作品になった気がしました。
 大変惜しい気がします。
 
 主演女優さんは2時間出ずっぱりでしたが、エネルギッシュで好感がもてました。
 ただ、男優さんはたくさんいるのに、なぜ女性が男性を演じなくてはならないのか。主役だし、女優とのラブシーンも多くあるのに、違和感を感じました。役者の演技がうまくとも、観客としては起用を納得できない部分です。
 
 全体的にもったいないなあと思う芝居ではありましたが、終演後のバックステージ見学ツアーはおもしろかったです。疲れているはずの役者さんたちが、ディズニーランドのキャスト同様に、たいそう親密に接待をしてくれました。
 芝居の内容では観客を突き放す感があった一方で、劇団をあげて、観客と近づこうという姿勢を強く感じました。二面性が不思議です。


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反省
2009-06-04 Thu 22:51
 演劇集団駄菓子屋本舗 第19回公演『希望ゲージ半分』にご来場いただき、ありがとうございました。
 舞台では初の客演ということで、参加させていただいた演劇集団駄菓子屋本舗さんには多大なご協力&ご迷惑をおかけしました。
 
 今回は、自分の中にあるいろいろな課題を一挙に解決したいと臨んだ舞台でした。
 ながらく劇団オグオブ以外の舞台には立っていなかったので、違う舞台に立ってみたいという純粋な欲求もありましたが、劇団オグオブでは諸々の事情でやれないことを実験させてもらいたいという厚かましい欲求がありました。
 実験というと駄菓子屋本舗さんに怒られてしまいそうですが、初心に還ろう、という感慨に近いかと。
 
 劇団オグオブの作風、その中の自分の演技スタイルはある程度確立されていて、お客様の期待にも応えたい。そうすると、失敗ができなくなるんですね。
 また、公演の雑務に追われて、演技に集中する余裕もない。だから、演技の上で冒険する余裕がなくなる。
 まずは、この姿勢を正し、演技に集中し、失敗してもいいから演技の幅をひろげる環境に身を置きたい。グラウンド・ゼロに立ちたい。
 そういった意味での、自分に対する実験です。
 駄菓子屋本舗さんは、作風、浅川氏の演出方法、興業のスタンスが劇団オグオブと対極にあり、自分の課題に最適であると考え、客演させていただきました。
 ・・・やはり怒られてしまうでしょうか。駄菓子屋本舗さんはかなり懐が広いので、大丈夫だと信じていますけれども。
 
 
 そして、今回の自分への課題。
(ここから先は、つづく。)


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