半径723mmの鑑賞録
 歴史好きな舞台女優による「古今東西、美しいもの」の鑑賞録です。 最新流行を追わなくても、「いいものは、いい」。 それを、きちんと形に残していければいいな。 ※ネタバレ注意※
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リングにかけろ!
2009/04/17(金)
 車田正美の長編ボクシング漫画。
 極貧生活から逃げ出そうとボクサーを目指す高嶺竜児と、天才セコンドの姉・菊の成長ストーリー。


 会社でマンガ部をつくりまして。
 社会人ともなると甘えたことは言えませんで、まるで体育会系のように、ビシバシとマンガを読まされるのです。
 「人生の中で、今が一番マンガを読んでいる。マンガを読むのが、こんなに辛いと思ったことはない。」とは先輩の弁。

 そんな私の現在の課題図書が『リングにかけろ!』です。ノルマは1日2冊です。
 車田正美の初期の長編のため、絵柄&ネタの迷走っぷりが笑えてしょうがないのですが、姉弟の愛や、星矢VS一輝的宿命対決など、車田作品の足跡をたどるには充分なのです。

 ただし、今日の私が感銘を受けたのは、竜児でも菊ちゃんでも剣崎でもなく、完全なる脇役・ジムの吉田先輩の言葉なのです。
 同じくジムのロク助が、デビュー戦を控え、1月で8キロの減量を目指している時のこと。

「プロなら、常日頃から自分のランキングの体重をキープしておくべきだ。
 それができないのは、プロの自覚がない奴だ。リングにあがる資格はない。」

 いやぁ、これは響きます。
 私も舞台のたびに体重を増減させるダメダメ女優なのです。舞台にあがる資格がない、と突き付けられてもしょうがない。
 『あしたのジョー』の力石や『はじめの一歩』の鷹村さんの壮絶な減量を見ても、所詮は対岸の火事と構えてましたが…。
 あのくらいの気概をもって、体重調整と技術向上を同時にやるのはもちろん、ベストは「減量をするまでもないこと」なのですね。
(力石の減量は意味が違うけど。)

 ボクシング漫画の二大巨塔に勝るとも劣らない、現実的な厳しさを教えてくれる『リングにかけろ!』。
 まだまだ先は長いですが、これから先は現実離れしていくからなぁ。
 そこが、「ボクシング漫画」にカテゴライズされにくい理由でしょうね。


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11:54 | マンガ| トラックバック:0 | コメント:0

「さくらん」
2007/02/23(金)
さくらんマンガ

映画公開に先駆けて読んでみました。
と書評らしく書きたいところですが、役者演技の勉強の一貫です。


次回公演で花魁が出てきますので、生態研究といったところです。(自分の役じゃないんだけどさ。)

「マンガが役に立つの?」と疑問の方もいらっしゃるでしょうが、ビジュアルでわかりやすいので、風俗や言葉遣いなどかなり参考になります。
もちろん、変なマンガならば参考にしませんよ。
一応史学専攻者の端くれですので、著者の参考文献や内容を考証した上で、史実の再現に誠実に取り組んでいると認められましたので、熟読しました。
(まあ、たかがマンガ鑑賞に際して充分に考証しちゃぁいませんので、あしからず。)
『働きマン』などを読んでいても、安野モヨコという漫画家の資料収集とプロットへの情熱は信頼に値すると感じますからね。


以前、『浮世絵で見る江戸吉原』という初心者用の指南書を読んだのですが、『さくらん』は実に女郎の出世の肩書きに忠実です。

禿【見習い】→引込禿【修行中】→新造【姉女郎の付添】→部屋持ち・座敷持ち【一本立ち・客を取る】→太夫(のちに花魁)【高級娼婦】→お職【一番の売れっ妓】

以上は、表通りに構えた店付の女郎のエリートコース。上に行くほど狭き門なので、途中で脱落者も出て、新造から召使いみたいな「遣り手」になったりもします。
それでもまだいい方で、裏通りの小路にぐるりと不潔な店があり、そこでわずかな料金で相手をする鉄砲女郎として一生を終える者も少なくなかったのです。 

さて、それを予備知識に『さくらん』を読むと、これが島耕作もビックリの女の出世物語だということがわかります。


【ストーリー】

 江戸時代。吉原・玉菊楼。

 女衒に売られてきた少女は、禿「ためき」として養われる。反骨な性格により何度も脱走を試みるが連れ戻され、折檻を受け続ける。

 そのうち、姉女郎の花魁に触発され、お職女郎として生きる道を次第に選ぶようになる。

 引込禿「おりん」、昼夜金二分の部屋持ち新造「きよ葉」と出世していき、最終的には、吉原一の花魁「日暮」となる。(出世魚みたく名前が変わっていく。)

 色と金、恋と裏切りを味わいながら成長し、いつしか口の悪さと美貌を売りに人気者となっていく。



 あらすじにしてみるとシンプルになりましたが、このマンガの見所は、随所の濃厚なエピソードですぞ。
 ドラマ性豊かな女性の一代記です。
 五社監督の『吉原炎上』もかくやの女の生き様。

 そもそも、『吉原炎上』は原作も製作者もすべて男性(ちなみに、こちらの原作は前述の『浮世絵に見る江戸吉原』の著者の佐藤さんです、たしか)。
 ですから、女郎とは底辺の生き方を時代に強いられた存在との前提からどうしても抜けられないようです。
 したがって、烈しく、哀しく、そして儚く、時代に翻弄された受動的な存在として女郎を美しく描いてしまいがちなのでしょう。

 しかし、「さくらん」では、「そういう時代背景は確かにあるんだろうけど、現実として、もう女郎だし。」という潔さがあります。
 だから、女の描き方にも哀れみはないのです。女郎という職業を選んだ実態を、「女って、もっとリアルに逞しいし。」と力強い筆致で描いていきます。
 プロとしての女郎の生き方に迫るその一方で、今日びよく見かける「ホステスもリッパな職業よ!」的な妙ちくりんなプライド意識に驕ることもなく、ドラマは進んでいくのです。


 さてさて、映画は・・・・観ないかもね。
 監督が、、、、どーなんだろうなあ。カメラマンだから、絵はお墨付きでしょうけどもね。

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02:22 | マンガ| トラックバック:0 | コメント:0
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