半径723mmの鑑賞録
 歴史好きな舞台女優による「古今東西、美しいもの」の鑑賞録です。 最新流行を追わなくても、「いいものは、いい」。 それを、きちんと形に残していければいいな。 ※ネタバレ注意※
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悪人
2010/09/30(木)
 2010年日本。原作:吉田修一、監督:李相日、出演:妻夫木聡、深津絵里。
 福岡で保険外交員の女が殺害され、長崎在住の建設作業員の男が指名手配される。彼と出会い系サイトで知り合った地味な女店員は、彼とともに逃避行を重ねる道を選ぶ。



 メッセージ性の高い、良い意味でわかりやすい作品。この監督さんの特長ですね。
 作品全体のエンターテインメント性を維持しつつ、重いメッセージをごり押しせずに観客に持ち帰らせる。うん、うまい。

 「悪人」とは、容疑者の男だけを指すのではありません。
 被害者も、容疑者も、容疑者に逃亡を唆した女も、罪に問われなかった関係者も、容疑者の家族も、マスコミも。
 犯罪とは言えない程度のささいな悪意が重なっていき、ある契機で爆発して「犯罪」と「悪人」が生まれる。そして、そこから、ささいな悪意の連鎖がまた始まる。
 この連鎖のうちでは、すべての人が犯罪に加担していたことになるけれども、本人たちには悪意はない。自分はちょっと愚かだったと反省するのがせいぜい。
 このように、私たちは日常的に加害者であるにも関わらず、その事実から目を逸らして生活している。最も悪なのは、無意識であることではないか。足を止めてその罪に気づくのは、大事なものを失ったときである。そういうメッセージを感じました。

 好感が持てるのは、「被害者だって加害者なんだよ(その逆も有)」という安易な終着点に下りず、理由の如何を問わず、犯罪者である事実は絶対に揺るがないという一貫した冷静な姿勢です。恋愛映画でありながら、主人公たちに過剰に感情移入せず、正当化もしません。
 その姿勢を固持することで、「犯罪者は必ず悪人だが、悪人は必ず犯罪者とは言えない。」との構図をむしろ浮き彫りにします。

 最近の邦画には珍しく、情熱的に感情を表に出す役柄が多い作品です。
 ここまで感情をおおぶりに出すのは難しいだろうなと思うのですが、冷静で淡々とした役柄と二極化させた場合、後者の方が演技評価が高くなる傾向があるのはちょっと残念。(なんでなんだろー。)
 だけど、満島ひかりちゃんと岡田将生くんは、もっと評価されていい。悪意なく軽薄な、等身大の若者の演技が上手なおふたりです。(余談ですが、『モテキ』の満島ひかりちゃんは、台詞回しが上手だなあと実に感心します。)ちょっぴりしか出ない余貴美子も、憎めない悪母ぶり。
 こういう故意なき悪人達が、感情豊かにしっかり脇を固めているからこそ、この作品に説得力を感じるのでしょうね。


  悪い青年がマスオくんって名で、福岡弁なので、個人的にツボ。
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ザ・コレクション・ヴィンタートゥール
2010/09/09(木)
@世田谷美術館

 スイスの文化都市ヴィンタートゥールの美術館所蔵品の一挙公開。
 まずは、人口10万人規模の一都市の美術館で、これほどの水準が高い作品群を所有できることが驚き。購入も保存も馬鹿にならない金額のはずなのに。不況下の日本では考えられない事態ですね。

 全作品日本初公開ということよりも、多岐にわたる画家の作品が集まっていることが素晴らしい。
 そして、その作品群を通してみたとき、スイス人の美意識がわかる点が最も面白いと思うのです。

 たとえば、モネの『乗り上げた船、フェカンの干潮』を見たときに、「何故わざわざこの作品を購入したのか?」と感じました。光の画家・モネの代表作を選ぼうとすれば、線がはっきりした画面の暗い作品を敢えて選ぶことはなさそうです。
 そういった「?」を抱えながら館内をまわり、郷土の画家の作品ルームに入ったときに、ぽんと膝を打ちました。
 スイス人は輪郭がはっきりしてて、中間色が強い作品が好きみたいです。
 そうして見ると、所蔵作品の多くが、故意か否かは不明ですが、同じ傾向を持っていることがわかります。古典より、ナビ派やキュビズムの層が厚いのも納得です。

 そこまで考えながら観覧していると、スイス人であるヴァロットンの、平面的なのに奥深い、メッセージ性が高い絵が生み出された背景が理解できてうれしくなります。
 しかし、今回展示された作品で言えば、ヴァロットンらしい作品よりむしろ、大自然の一瞬を切り取った『日没、オレンジ色の空』の美しさに感激します。
 誰もが愛する、太陽が沈む瞬間にだけ望めるあのオレンジの光。眩しさに目を細めると、山の端には赤色が混じっており、そう、この一瞬には、可視できる光の色があるのだと思いださせてくれます。
 たとえ高性能なカメラが生み出された現代でも、この自然の美しさを切り取ることはできないのではないでしょうか。
日没、オレンジ色の空

 そして、大好きなナビ派。収蔵数の多さに感動しました。
 何より、ピエール・ボナール作品はどれも秀作です。
 特に、『散歩』は、自然と微笑みが浮かぶ、いい意味での「ゆるさ」を感じます。
 画面を大きく占めるのは、二人連れの中流階級のおすまし貴婦人。その二人の散歩を描いているのかと思いきや、本当の主役は右端の女の子なのです。
 胸を張って歩く少女。「猫と遊んで楽しかった。」というような満足げな足取りです。ウィンドーショッピングなんて俗な愉しみを知らなくても、足元の小さな幸せを拾っていければいいじゃない。猫とか子どもとか、精一杯生きる小さな生き物への、ボナールのやさしい目線が生きている作品です。

 この企画展で大きく取り上げられるゴッホ、アンリ・ルソーですが、コクリツのオルセー展の後だと分が悪いですねー。
 ゴッホ『郵便配達人 ジョゼフ・ルーラン』は「ゴッホの黄色」が印象的な作品である一方で、習作らしさが物足りない。
 アンリ・ルソー『赤ん坊のお祝い!』は題名の面白さが良いですね。赤ん坊なのに赤ん坊じゃない恐さ。キッチュな絵柄がルソーらしくていいです。
 せっかくセビにルソーを観に来たのでしたら、所蔵品展の『フリュマンス・ビッシュの肖像』も観ていきましょう!


  セビは1年ぶりでした。駅から遠い…
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トイ・ストーリー3
2010/09/08(水)
 2010年アメリカ。ピクサー・アニメーション・スタジオ。
 アンディが大学にあがることになり、彼のおもちゃたちは自分の身の振り方が気になっていた。大学に一緒に行けるのか、屋根裏部屋行き、ゴミ…。手違いで幼稚園に連れて行かれたおもちゃたちは、脱走を企てる。



 3作目となると内輪ネタになりそうなところを、大人が楽しめる内容に比重をスイッチしており、見て損はない出来です。
 それでいて、子ども目線でわかりやすいストーリーや、親しみやすいキャラクター。従来のトイ・ストーリーの伏線もしっかり生きていて、従来からのファンも満足できます。
 トイ・ストーリーの1、2作目と比較しても、私は3作目が好きですね。

 バズ・ライトイヤーの異なる性格が見られるのも、バズファンとしてはうれしいところ。
 クライマックスでは、え? ジェシーはウッディと、じゃなかったの?って意外に思いますけどね。違う種類のおもちゃでくっついちゃってもいいのが、多民族国家アメリカ発だなあ。
 でも、バズは生真面目キャラであってほしいから、彼女なんてつくって欲しくありません(ただのファン心理)。
 また、バービーとケンがとてもいい味を出しています。

(ここからネタバレ注意)
 物語の締めとして、アンディがおもちゃたちを女の子に贈る、というのは、非常に素敵だと思います。
 予想を裏切る結末でもあり、ここで伏線が活かされてくるのかと納得する展開でもあり、そしてなにより、アンディにとっても、ウッディたちにとっても、自分の意思による別れの選択だからでしょう。
 大学生になっても大事にしようと思っていたウッディを、女の子に譲渡するアンディのためらい。
 「大事にしてほしい」と一生懸命、年端もいかない少女に訴えかける青年。
 年甲斐もなく、おもちゃたちと最後に思いっきり遊ぶ姿。
 大人は誰でも経験した通過点です。ハラハラ・ドキドキ・ドタバタ冒険劇で童心に還っていた大人は、グッときてしまうのではないでしょうか。

 大事にしてきたものだからこそ。
 後継に譲っていかなきゃいけない。先人の意思を継いで、守っていかなきゃいけない。
 それは、おもちゃだけに通じるものではない。
 そんなメッセージを感じました。


  大事なおもちゃはありますか。
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NAME : のんゆり
劇団オグオブの女優です。
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