半径723mmの鑑賞録
 歴史好きな舞台女優による「古今東西、美しいもの」の鑑賞録です。 最新流行を追わなくても、「いいものは、いい」。 それを、きちんと形に残していければいいな。 ※ネタバレ注意※
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ザ・コレクション・ヴィンタートゥール
2010/09/09(木)
@世田谷美術館

 スイスの文化都市ヴィンタートゥールの美術館所蔵品の一挙公開。
 まずは、人口10万人規模の一都市の美術館で、これほどの水準が高い作品群を所有できることが驚き。購入も保存も馬鹿にならない金額のはずなのに。不況下の日本では考えられない事態ですね。

 全作品日本初公開ということよりも、多岐にわたる画家の作品が集まっていることが素晴らしい。
 そして、その作品群を通してみたとき、スイス人の美意識がわかる点が最も面白いと思うのです。

 たとえば、モネの『乗り上げた船、フェカンの干潮』を見たときに、「何故わざわざこの作品を購入したのか?」と感じました。光の画家・モネの代表作を選ぼうとすれば、線がはっきりした画面の暗い作品を敢えて選ぶことはなさそうです。
 そういった「?」を抱えながら館内をまわり、郷土の画家の作品ルームに入ったときに、ぽんと膝を打ちました。
 スイス人は輪郭がはっきりしてて、中間色が強い作品が好きみたいです。
 そうして見ると、所蔵作品の多くが、故意か否かは不明ですが、同じ傾向を持っていることがわかります。古典より、ナビ派やキュビズムの層が厚いのも納得です。

 そこまで考えながら観覧していると、スイス人であるヴァロットンの、平面的なのに奥深い、メッセージ性が高い絵が生み出された背景が理解できてうれしくなります。
 しかし、今回展示された作品で言えば、ヴァロットンらしい作品よりむしろ、大自然の一瞬を切り取った『日没、オレンジ色の空』の美しさに感激します。
 誰もが愛する、太陽が沈む瞬間にだけ望めるあのオレンジの光。眩しさに目を細めると、山の端には赤色が混じっており、そう、この一瞬には、可視できる光の色があるのだと思いださせてくれます。
 たとえ高性能なカメラが生み出された現代でも、この自然の美しさを切り取ることはできないのではないでしょうか。
日没、オレンジ色の空

 そして、大好きなナビ派。収蔵数の多さに感動しました。
 何より、ピエール・ボナール作品はどれも秀作です。
 特に、『散歩』は、自然と微笑みが浮かぶ、いい意味での「ゆるさ」を感じます。
 画面を大きく占めるのは、二人連れの中流階級のおすまし貴婦人。その二人の散歩を描いているのかと思いきや、本当の主役は右端の女の子なのです。
 胸を張って歩く少女。「猫と遊んで楽しかった。」というような満足げな足取りです。ウィンドーショッピングなんて俗な愉しみを知らなくても、足元の小さな幸せを拾っていければいいじゃない。猫とか子どもとか、精一杯生きる小さな生き物への、ボナールのやさしい目線が生きている作品です。

 この企画展で大きく取り上げられるゴッホ、アンリ・ルソーですが、コクリツのオルセー展の後だと分が悪いですねー。
 ゴッホ『郵便配達人 ジョゼフ・ルーラン』は「ゴッホの黄色」が印象的な作品である一方で、習作らしさが物足りない。
 アンリ・ルソー『赤ん坊のお祝い!』は題名の面白さが良いですね。赤ん坊なのに赤ん坊じゃない恐さ。キッチュな絵柄がルソーらしくていいです。
 せっかくセビにルソーを観に来たのでしたら、所蔵品展の『フリュマンス・ビッシュの肖像』も観ていきましょう!


  セビは1年ぶりでした。駅から遠い…
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<お気に入りの作品>

アルフレッド・シスレー『朝日を浴びるモレ教会』
メダルド・ロッソ『アンリ・ルアール』
ロヴィス・コリント『モデルと一緒の自画像』
エドゥアール・ヴュイヤール『室内、夜の効果』『アネット・ナタンソンと道化人形』
パウル・クレー『水脈占い師のいる風景』
アルベルト・ジャコメッティ『座って新聞を読むディエゴ』



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