半径723mmの鑑賞録
 歴史好きな舞台女優による「古今東西、美しいもの」の鑑賞録です。 最新流行を追わなくても、「いいものは、いい」。 それを、きちんと形に残していければいいな。 ※ネタバレ注意※
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鳥獣戯画展 その2
2007/11/14(水)
『鳥獣戯画がやってきた』@サントリー美術館(東京)
公式HP> http://www.suntory.co.jp/sma/exhibition/07vol04chouju/index.html


 「鳥獣戯画」を想像してください。
 おそらく、多くの人はウサギやカエルが遊んでいる姿を頭に描いたのではないでしょうか。それは、鳥獣戯画絵巻の第1巻、甲巻の絵です。
 鳥獣戯画が、甲巻・乙巻・丙巻・丁巻の四巻から成り立つセットものだと知っていましたか?
 「鳥獣戯画は伝・鳥羽僧正作」と教え込まれた私にとって、鳥獣戯画各巻が異なる時代の、異なる作者による異なるモチーフの絵巻物4巻シリーズとは驚きでした。誰が何のために描いたのか、それは謎につつまれています。
 なお、正式名称は、「鳥獣人物戯画絵巻」です。


 前回は「鳥獣戯画展」の概略をしるしましたので、今回は「鳥獣戯画展」が投げかける謎と、私なりの見解を記します。
 まず、各巻を整理してみましょう。

甲巻。平安時代12世紀。15種類の動物が擬人化されて遊び、法会を楽しむさまを描く。
甲巻うさぎとかえる

 画題は、動物説話を絵画化したとか、動物が年中行事をする様子とか諸説あります。作者においては鳥羽僧正と伝えられてきましたが、生没年と一致せず、密教の絵仏師や宮廷絵師が有力説となっています。そもそも甲巻は前半部分と後半部分は画風が異なり、別の人物が描いたと考えられています。
 甲巻は、その筆致は豪放磊落。一見、手なぐさみに描いたかのような大胆な筆遣いでありながら、その実、動物の筋肉の動きがリアルに伝わる抜群のデッサンであり、深い素養がうかがわれます。
 密教絵画の影響を受けた白描画ですが、大作をつらぬく調和のとれた構図や、立体と平面を両立させて描かれた動物たちは、大和絵の様式です。


乙巻。平安時代12世紀。動物画だが、甲巻と異なり、あくまで動物として描かれている。
乙巻

 絵画として完結した甲巻に比較すると、同じ系譜と見られる作家が描いた乙巻は、1枚の絵画というよりむしろ図鑑と称するにふさわしいと感じます。
 描かれた動物たちは甲巻のようにストーリー性を持たず、その描写は羽の1枚まで緻密です。甲巻のイメージを模倣しつつ、密教絵画の白描画の手本として描かれたのではないかと思えます。


丙巻。平安~鎌倉時代。12~3世紀。人物画であり、碁・将棋・双六や紐引き遊びなど当時民間で流行した遊びを記録している。
丙巻

 さらに丙巻にいたると、図鑑様はいっそう色濃くなります。半紙1枚につき1図を描きそれをつなぎ合わせていることからも、作家が図鑑様を意識していたことがわかります。甲・乙とは系譜の異なる作家の手による当世風俗図という趣です。
 碁・双六・将棋という当時の代表的な遊戯に始まり、その遊戯の担い手も僧侶・庶民が適切に描き分けられています。


丁巻。鎌倉時代。13世紀。人物画。丙巻と同じく風俗を描くが、筆致が非常に漫画風。
丁巻

 そして丁巻では、丙巻の風俗図よりさらにくだけた庶民の遊びが収録されます。まるで「丙巻は上品ぶっている」と言わんばかり。
 その絵柄もまるっきりマンガで、作家に絵画の素養があるかどうか断定できないほどです。日本が世界に誇るマンガ文化はここから生まれたのではと思えてきます。


 4巻の変遷を見ると、甲巻はシリーズものの意図を持たないオリジナル。わずかに時遅れて描かれた乙巻は、甲巻と対極をめざした写実性を極めた作品。丙巻以降は、「図鑑様」「おもしろ画」の甲巻の系譜を意図して作製されたのではないかと考えられます。
 もっとも、現存するのが4巻のみであり、実際には多くの絵巻が存在したでしょう。
 室町時代には多くの模写本が存在していますから、鎌倉時代にはすでに甲巻の絵画的知名度は高かったと推測されます。
 甲巻を意識した作品群が、一個の絵画的総本山として「鳥獣戯画の高山寺」に納められ、それが「鳥獣戯画」シリーズとして伝来されたと考えられるのも難くないのです。


 さて、今回の展示の目玉は、謎が多い甲巻の本来の順序の復元です。
 模写本の長尾本、住吉本と対照するに、甲巻は製作当初とは順番が異なり、現存するかたちは物語の主題としては不自然な形で再編されているとわかっています。
 その本来の姿はどうであったか。
 長尾本が本来の鳥獣戯画に最も近いと推測されると、展覧会では結論づけます。
 しかし、長尾本にも不足する部分があります。そこが欠落する前段階の「鳥獣戯画」が存在するかもしれません。はたまた、欠落しているかのように見える部分は後代の加筆かもしれない。現に、鳥獣戯画は自由な画題であるため、近代の模写では後代の作家の創造が多く認められるのです。
 このように、聴衆にいろいろな想像の余地をもたせ、美術展示会の枠を越えた考証は幕を閉じるのです。


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鳥獣戯画展
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